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人力飛行機→フライトシム→RC飛行機→セキセイインコ飼育→上級滑空機ライセンス取得という空物好きです。
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ラジコン飛行機の重心位置を調整している時、重心を後方に移動させていくとエレベーターが敏感になって行くという経験があるかと思います。
この現象、ずっと不思議に思っていたのですが、最近学生時代の教科書を読み返していて、もしかしたら「1Gあたりの昇降舵角」に関係しているのではと思いました。 「1Gあたりの昇降舵角」とは何ぞや?ですが、これは「1Gの荷重倍数変化を作り出すのに必要なエレベーターの舵角」です。 降下からの引き起こしや旋回中は、重力(G)が働いて機体重量が増加しています。 因みに60度バンクの定常旋回時では、機体には2Gの重力が掛かっています。 釣り合い水平飛行時(定常状態)は1Gですが、飛行機の運動状態によってこの重力が異なるわけで、定常状態の何倍のGが掛かっているかを「荷重倍数」と言います。 急激な引き起こしなどを行うと、荷重倍数が大きくなり、最悪構造破壊を起こします。 実機では通常運用中に発生させる事ができる荷重倍数が制限されており、制限荷重倍数と呼ばれます。 さて、降下状態から引き起こしをする際は当然エレベーターを引く事になりますが、その際のエレベーター舵角が大きければ当然急激な運動となり荷重倍数が大きくなります。 しかし、このエレベーター操作量によって発生する荷重倍数は、実は重心位置によって異なってきます。 重心位置によっては、小さい舵角で+1Gを発生させられたり、多きな舵角を取らないと+1Gを実現できないという事が起きます。 またしてもややこしい式を出しますが、引き起こしの際の1Gあたりの昇降舵角は次式になります。 (と言うか、なるそうです(笑)) 注目すべきはCmα/CLαとltです。 Cmα/CLαは(h-hn)と書き直せるのですが、これは重心後方限界と重心位置の差で、つまり静安定余裕の事です。 ltは重心と尾翼の空力中心(25%MACと考えて良いと思います)です。 Cmα/CLαとltは重心が後退すると値が小さくなり、この式の計算結果の値が小さくなります。 つまり小さい舵角で1Gを実現してしまう訳ですから、ちょっとしたエレベーター操作で大きな荷重倍数の運動が起きてしまいます。 つまりエレベーターが敏感になったと感じるようになります。 もう少し具体的に考えて見ます。 下の表は京商 ゼロ戦EP500の計算例です。 実際に飛ばしている30%MACと説明書記載の重心範囲である35%MACと38%MACの比較です。 τは昇降舵の利きといわれる値で、エレベーター面積と水平尾翼面積の比から求まる値で、参考文献にあるグラフから読み取っています。 また重量ですが質量(kg)ではなく重力加速度が掛かっている事に注意してください。 1Gあたりの昇降舵角の計算結果ですが、上表のオレンジの行になります。 重心が後方に移動すると値が小さくなっていく事が分かると思います。 30%MACを基準に比べると、35%MACは1.18倍、38%MACで1.49倍舵角が敏感になるという結果になりました。 重心が後方に移動した事による安定性の低下に加え、この1Gあたりの昇降舵角が小さくなる相乗効果で、非常に飛ばしづらい状況に陥ってしまうと思われます。 35%MACでも時々激しいピッチングを起こしていたので、38%MACでの飛行はほぼ不可能なのではと思います。 前回考察した安定余裕ですが、入門機などは大きな水平尾翼と十分なテールアームがあるので、静安定余裕は十分あり重心設定範囲が広がりますが、余裕があるからといって重心を後へ下げすぎると、この1Gあたりの昇降舵角の影響が大きくなってくると思いますので、注意が必要かと思います。 ※参考文献 航空機力学入門 加藤寛一郎・大屋昭男・柄沢研治 著 東京大学出版会 PR コメントを投稿する
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