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人力飛行機→フライトシム→RC飛行機→セキセイインコ飼育→上級滑空機ライセンス取得という空物好きです。
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重心の後方限界と安定余裕

重心位置は定められた前方限界と後方限界の間に設定することが求められます。

後方限界は機体の形状が決まると自動的に決まってきます。
実は後方限界には幾つかあって、Cmα<0という条件以外に実機では昇降舵を固定した場合とフリー(手放し飛行)にした場合の要求があります。
実機の後方限界はこれらの要求の一番厳しい昇降舵フリーの制限値をとりますが、模型飛行機では昇降舵に関する要求まで考える必要はないと思います。


以下の表は手持ちの機体について調査したものです。
この表の重心後方限界はCmα=0となるポイントを示しています。
また静安定余裕は設定した重心位置と後方限界との差です。

後方限界は主に尾翼の復元力によって前後します。
尾翼面積が大きくなったり、尾翼までの距離が大きくなると復元力が大きくなり、重心後方限界は後へ移動し重心設定範囲に余裕が出てきます。




京商ゼロ戦EP500はマニュアル通りの位置に重心を合わせると35%~38%MACになってしまいます。
重心後方限界を計算すると43.2%なので、静安定余裕は5.2~8.2%しかありません。

購入当初説明書通りに35%MACで飛ばしたのですが、非常に安定度が悪く、ちょっとした事で失速するような姿勢になってしまい、1度落としてしまった事があります。
今は30%MACにして非常に飛ばしやすい機体になりました。
静安定余裕は13.2%に上がっています。

また今は強風モドキに改造してしまった紫電EP400ですが、意外にも雷電より後方限界が前にあり、静安定余裕は他と比べて一番小さかったです。
今思うと、確かに時々フラフラっとした事が何度かあり、一番飛ばしづらい感じがありました。

その後強風モドキへと改造しましたが、表を見ていただくと分かるとおり、重心後方限界が前方へ移動しています。
実は縦の静安定は胴体の容積の影響も受け、胴体が大きくなると不安定側に影響します。
後方限界が前方に移動して38.2%になったのは、フロートの容積を計算に加えた結果です。
フロートは胴体と同じ様な大きさになってしまっているので、縦の静安定への影響は無視できないものになっています。

なので30%MACのままでは、とても不安定で飛ばせません。
静安定余裕も8.2%しかありません。
事実、初飛行の際には3回ほど失速し、もはや帰還は無理という状態に追い込まれてしまいました。

強風モドキの改造記に書いたように、現在は25%MACにしており静安定余裕は13.2%に改善しています。

で、結局改めて統計を取ってみると、静安定余裕が11%以上無いと安定した飛行は難しいと分かりました。
できれば13%以上が望ましいと思います。
その点から見るとFMSのBIG ZEROはマニュアル通りの指定で14%の静安定余裕があるので、十分飛ばし易い機体だということが分かります。


じゃあ、静安定余裕を計算する為に、どうやって重心後方限界を出すの?って話しになりますが、これは式が複雑な上、尾翼位置での主翼吹き下ろしだの、全機揚力係数だの、飛行力学の専門領域になるので一般的ではありません。

なので、大戦機などのスケール機については、重心後方限界はそんなに今回の例とはかけ離れていないと思うので、25~30%MACでいいと思います。
水平尾翼が他と比べて小さめだなぁと感じたら、なるべく前へという事も付け加えておきます。

重心位置はあくまでもMAC基準です。
主翼の付け根ではないので注意してください。
MACがどこにあるのかは、簡単に求める方法をこのブログで紹介していますので、そちらを参考にしていただければと思います。

重心位置と平均空力翼弦
2段テーパー翼の平均空力翼弦位置(3)


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重心位置と縦の安定性(2)

前回のゼロ戦EP500の例では重心位置を30%MACとして計算しました。
じゃあ重心位置が動いたらどうなるのよ?って話ですが、早速計算してグラフにしてみましょう。

左が前回と同じ重心位置30%MACで、右が説明書通りに設定した35%MACのグラフです。


  


どうでしょう?
パッと見で明らかにグラフの傾きが異なっていますね。
35%の方がなだらかになっています。
このグラフの傾き、実は前回紹介したCmαという値です。

30%MACの時のCmα:-0.752
35%MACの時のCmα:-0.502

Cmαは姿勢が崩れた時にどの位の復元力を発生させるかという目安になり、マイナスで大きいほど大きな復元力が発生します。

さらにもう一点違いがあります。
横軸と交わるCm=0になる釣り合い迎角が約9度まで上がっています。
主翼のゼロ揚力迎角が-2度と仮定しているので、飛行姿勢は9-2で7度機首上げで釣り合うという事になります。
重心が後ろに行ったことによって、頭上げでゆっくり飛ぶようになります。
なんだかやっぱり重心位置で飛行速度を決められそうな気がしてきますね。
しかし決定的に違うのは縦の安定を支配するCmαの値が悪化してしまっているという事です。


さて、釣り合い迎角が9度などと高迎角で飛ぶと失速の恐れがあるので、エレベータートリムを取って迎角6度で釣り合うようにしてみます。


今回の計算では、エレベータートリムを1mm頭下げに入れると35%MACでも最初と同じ姿勢(つまり同じ飛行速度)で飛ぶようになります。


次に下のグラフを見てください。
緑の線は重心位置が35%MACで、釣り合い迎角が6度になるようにトリムした状態。
ブルーの線は重心位置が30%MACで、同じく釣り合い迎角が6度になるようにトリムした状態です。


この6度の釣り合い迎角でトリムされた飛行が、突風を受けて9度に迎角が上がってしまったとします。
その時のCmの値は明らかにブルーのラインである30%MACの方がマイナスで大きな値になっています。
つまり、復元力が大きいという事です。
重心を前に移動すると、このグラフの傾きはどんどんキツくなり、少しの迎角変化で大きな復元力を発生するようになります。
逆に後方に移動すると、傾きが緩やかになり重心後方限界になると真横になってしまい、Cm=0のラインと交わらなくなり、釣り合い迎角がなくなってしまいます。
このように飛行機が縦安定を持つためにはグラフの傾きが右肩下がり、つまりCmαがマイナス(Cmα<0)である必要があります。


次のグラフは重心位置を変えずにエレベータトリムを使って姿勢を変化させた様子です。


機首上げトリムを1mm入れると、釣り合い迎角が6度から8度に変わっています。
逆に機首下げトリムを1mm入れると釣り合い迎角が4度になります。

見ての通りグラフの傾きは変わらず、平行移動しているのが分かると思います。
つまり縦の安定度を変えることなく、姿勢を変化させることができるという事です。

重要なのは
・重心位置を動かすとグラフの傾きが変わる。
・トリム(昇降舵)を動かすと傾きが変わらず平行移動する。
という点です。

どちらの場合も釣り合い迎角を目的位置までグラフを移動させる事は可能です。
しかし、重心位置を移動させて目的の釣り合い迎角を実現させることは、同時に縦の静安定も変化させてしまっているという点に注意する必要があります。

なので重心位置をずらしながら様子を見て、最終的にトリムをあわせるという作業と、最初から適正範囲に重心を置いて、調整はトリムだけで行うという作業は根本的に異なっているのです。


また長くなりましたので、さらに次回に続きます。。。




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重心位置と縦の安定性(1)

初めて買った飛行機を飛ばすとき、重心位置をどう設定していますか?
入門機、スケール機、スタント機、ファンフライと色々ありますが、今回は入門機やスケール機に焦点を当てて重心位置について解説しみます。

※スタント機やファンフライなど特殊な飛行をする場合は、通常のセオリー通りの設定でないこともあります。
というか、私自身やったことがないのでわからないというのが正直なところです。。。

さて、私が考えるに重心位置は25%~30%MACの間に設定さえすれば、翼が捻じれてるとか、尾翼が変な角度で付いているという事が無い限り、初飛行で墜落という事は無いと思っています。

時々初飛行の状態を見て「突込み気味だから重心を後ろへ下げよう」とか、「頭上げするから重心を前に」という判断をされる場合があるようですが、飛行姿勢(または飛行速度)を決めるのは尾翼取り付け角やエレベータートリムであって、重心位置ではありません。

重心位置を変えると、確かに飛行姿勢が変わって飛行速度も変わります。
しかし、重心位置が変わると飛行機が持つ縦の安定も変化してしまいます。
重心位置は機体の形が決まると、自動的に適正な重心範囲が決まってしまいますので、重心位置は飛ばす前にこの適正範囲に収めておく必要があります。

京商のゼロ戦EP500を例に計算をしてみました。

主翼面積:0.1735m^2
スパン:1m
MAC:0.1795m
アスペクト比:5.76
水平尾翼面積:0.0426m^2
水平尾翼容積:0.594
重心位置:30%MAC
重心後方限界:43.2%MAC
Cmα:-0.752

最後に挙げた見慣れないCmαという値ですが、これは飛行機が定常飛行している状態から何かしらの擾乱を受けて飛行姿勢が乱れたときに、どの位復元力が発生するかを表す値で、マイナスで大きな値になるほど姿勢変化に対する復元力が強くなり安定度が上がります。



このグラフはゼロ戦EP500について、縦の安定を表したグラフです。
この計算では主翼取付角0度、主翼のゼロ揚力線を-2度、尾翼取付角0度と仮定して計算しています。

縦軸のCmはモーメント係数といって、プラスが機首上げ、マイナスが機首下げの回転力を表しています。

横軸は主翼の迎角(ただしゼロ揚力線から図った角度)です。
※ゼロ揚力線
(対象翼ではないキャンバー翼は迎角ゼロでも揚力を発生します。逆に言うと揚力がゼロになるマイナスの迎角があるという事で、そのラインをゼロ揚力線と言います)

縦軸が0(Cm=0)であるとき、飛行機には機首上げも機首下げの力が働かないという事を表していて、つまりこのポイントが飛行機の釣り合い迎角という事になります。
このグラフでは、約6度の所で横軸と交差しているので、飛行姿勢(ピッチ角)は6度-2度で4度機首上げの状態で飛行するという事になります。
(主翼の取り付け角をゼロと仮定しているためです。もし取付角が2度ならピッチ角はさらにその分減少して2度となります。)

さて、次に釣り合い状態から突風を受けて迎角が8度になったとしましょう。
グラフを見てください。
迎角8度の時、Cmの値はマイナス0.022位でしょうか。
この時Cmがマイナイスなので機体には機首下げの回転力が発生します。

逆に迎角が下がって3度になったとしましょう。
すると今度はCmがプラス0.04位の値になり、今度は機首上げの回転力が発生します。

こうして最終的にCm=0の点に落ち着くように、機体が勝手に姿勢を戻していきます。
これが静安定の正体です。

このように釣り合い状態から姿勢が崩れたとき、元に戻そうとする復元力が発生することを「縦の静安定がある」といいます。

ちょっと長くなったので、続きは次回に。



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Ka-8bのMAC位置をグラフから読み取る

毎度お馴染みの画像ですが、グラフを使ってMAC位置を出すやり方を説明します。





テーパー切替位置Yが0.6なので、60%用のグラフを使います。
λ2=0.41の点を真っ直ぐ上にあげ、λ1=0.7のラインにぶつけます。
グラフからYの値が0.435と読み取れます。

なので片翼スパン1000mm×0.435=435mmが機体中心線からMACまでの距離となります。

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2段テーパー翼の平均空力翼弦位置(3)

テーパー切替位置が30%~80%まで5%刻みでグラフを分けて作りました。
下図を参考に各テーパー比、λ1、λ2を機体から実測して、自機のテーパー切替位置にあったグラフを使用します。
λ1、λ2の組み合わせでMAC位置の値を読み取り、片翼幅の寸法を掛ければ機体中心位置からの距離が求まります。



具体的な使い方は「Ka-8bのMAC位置をグラフから読み取る」を見てください。
また2段テーパーではなく、単純なテーパー翼の場合は「重心位置と平均空力翼弦」にある表で求めます。


テーパー切替位置=30%


テーパー切替位置=35%


テーパー切替位置=40%


テーパー切替位置=45%


テーパー切替位置=50%


テーパー切替位置=55%


テーパー切替位置=60%


テーパー切替位置=65%


テーパー切替位置=70%


テーパー切替位置=75%


テーパー切替位置=80%



尚、このグラフを作成するにあたっての根拠は「2段テーパー翼の平均空力翼弦位置(2)」です。

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